「フィードバックって、結局なに?」と感じていませんか
フィードバックという言葉は、仕事の場では頻繁に出てきます。
会議でも、1on1でも、評価面談でも、ごく自然に使われています。
けれど、いざ意味を考えると、少し曖昧なまま使っている人が多いのも事実です。
たとえば、こんな経験はないでしょうか。
・部下に改善点を伝えた
・その場では「分かりました」と返ってきた
・しかし、しばらく経っても行動はほとんど変わらない
あるいは、
・良かれと思って率直に伝えた
・それ以降、相手が少し距離を取るようになった
・以前より会話が表面的になった気がする
こうした場面に直面すると、多くの人はこう考えます。
「伝え方が悪かったのかもしれない」
「もっと優しく言うべきだったのかもしれない」
ただ、現場で繰り返し起きているのは、
言い方の問題では説明できないズレです。
フィードバックという行為そのものを、
少し違った意味で捉えてしまっている。
そのことが、伝える側と受け取る側の間に、見えない行き違いを生んでいます。
フィードバックは「評価」でも「注意」ではない
フィードバックは、
相手を良い・悪いで判断することではありません。
できている点や足りない点を並べることでもありません。
フィードバックとは、
「どんな行動を取れば、結果がよくなりそうか」の気付きを与える行為です。
ここで大切なのは、
相手を動かそうとする前に、判断を脇に置くことです。
評価や注意が前に出ると、
話の焦点は「過去」に向きます。
一方で、フィードバックの焦点は「これから」です。
・今、何が起きているのか
・どこまではうまくいっているのか
・次に一歩動くなら、どこが現実的か
この整理された情報を渡すことで相手に気付きを与えること。
それがフィードバックの役割です。
この前提を持っているかどうかで、
同じ言葉を使っても、相手の受け取り方は大きく変わります。
なぜ「評価のつもり」で話すと、相手は動かなくなるのか
理由は、相手の頭の中で起きている反応を見ると分かります。
人は、自分が評価されていると感じた瞬間、
考える方向が変わります。
「どう改善するか」ではなく、
「どう受け取られているか」に意識が向くのです。
このとき、相手の頭の中では次のようなことが起きています。
・これは減点されている話なのか
・自分は期待に応えられていないのか
・これ以上、話が広がらないようにしたい
こうした思考が先に立つと、
新しい行動を考える余裕はほとんど残りません。
その結果として、
・表面上は素直に聞いているように見える
・しかし中身は「早く終わらせたい」に近い
・行動は変わらない
という状態が生まれます。
伝えた側から見ると、
「ちゃんと伝えたのに、なぜ変わらないのか」と感じます。
一方で、受け取った側には
「判断された」「責められた」という感覚だけが残る。
このすれ違いは、
個人の能力や性格の問題ではありません。
フィードバックを
過去の出来事を裁く行為として扱ってしまうことが、
行動につながらない一番の理由です。
だからこそ、
フィードバックを機能させたいなら、
言葉選びよりも先に、
「何のために話すのか」を自分の中で整理する必要があります。
「ちゃんと伝えているのに変わらない」現場で起きていたこと
あるチームリーダーの話です。
30代前半。プレイヤーとしての成果は安定しており、初めて部下を持ち始めたタイミングでした。
彼は、部下に対してこう感じていました。
・指示待ちが多い
・自分で考えて動く場面が少ない
・もう一段成長してほしい
そこで、1on1の場でこう伝えました。
「もう少し主体的に動くと成果も変わるように感じるけど、どうかな?」
「言われる前に考えて動けると行動量が増えて成長に繋がりそうだけど、どう思う?」
言い方もきつくない。
感情的でもない。
本人としては、かなり配慮したつもりでした。
部下はうなずき、
「分かりました。意識します」と答えました。
その場は、特に問題なく終わったように見えました。
数週間後、何も変わっていない
ところが、その後の様子はほとんど変わりません。
・仕事の進め方は以前と同じ
・判断が必要な場面では、やはり確認が入る
・主体性が増えた実感はない
リーダーは少し戸惑います。
「ちゃんと伝えたはずなのに」
「理解はしているようだったのに」
次の1on1では、少し踏み込んで言いました。
「前にも言ったけど、主体性のところは意識してる?」
部下はこう答えます。
「はい、気をつけてはいるんですが…」
その表情は、どこか歯切れが悪い。
それ以上、話は深まりませんでした。
部下の側では、何が起きていたのか
後になって、この部下に話を聞く機会がありました。
そこで出てきたのは、意外と率直な言葉でした。
・「主体性って、具体的に何をすればいいのか分からなかった」
・「今のやり方がダメだと言われた気がして、慎重になった」
・「間違えたらまた言われるかも、と思ってしまった」
彼はサボっていたわけでも、反発していたわけでもありません。
むしろ、失敗しないように動こうとしていたのです。
ただ、その結果として、
・自分から踏み出す動きは減り
・確認が増え
・リーダーからは「変わらない」と見える状態になっていました。
何がすれ違っていたのか
このやり取りで起きていたのは、
伝える側と受け取る側で、話の焦点がズレていたということです。
リーダーは、
・「次はこう動いてほしい」という未来の話をしているつもりでした。
一方、部下は、
・「今までのやり方が評価されていない」という受け取り方をしていました。
同じ言葉でも、
受け取る側の意識が「判断されている」方向に向いた瞬間、
行動は慎重になります。
その結果、
・話はした
・理解もしたつもり
・でも、行動は変わらない
という状況が生まれます。
このケースが示していること
この事例で重要なのは、
誰かの能力が低かったわけでも、
言い方が極端に悪かったわけでもない、という点です。
ただ一つ違っていたのは、
「どう動けばいいか」が同じ解釈で共有されていなかったこと。
フィードバックが、
・感想
・印象
・期待の表明
で終わってしまうと、
受け取った側は「どう直すか」を自分で想像するしかありません。
その想像がズレれば、
行動もズレます。
ここまでくると、
次に必要なのは精神論でも叱咤でもなく、
もう少し具体的な整理です。
フィードバックを「次の行動」につなげる4つの手順
ここからは、考え方ではなく、実際にどう話すかの話です。
特別なスキルや難しい言い回しは必要ありません。
順番だけを意識してください。
手順① まず「起きていること」だけを切り出す
最初にやるべきことは、意見を言うことではありません。
評価もしません。
ただ、相手から見えている・聞こえている事実だけを共有します。
たとえば、
・「最近、判断が必要な場面で確認が増えているね」
・「会議では意見を聞かれたときに答えることが多いね」
この時点では、
良い・悪いを言わないことが重要です。
ここで多くの人がやってしまうのが、
事実と一緒に感想を混ぜてしまうこと。
「〇〇なのは良くない」
「△△だと思う」
これを入れると、相手は一気に身構えます。
まずは、「何が起きているか」だけで止めます。
手順② 「事実に基づく仮説」を具体的に伝える
次に必要なのは、その事実から考えた仮説を伝えること。
それにより、
・自分の言動が周囲にどのような印象を持たれる可能性があるのか?
・自分はなぜその言動を取ったのか?
このようなことを考えさせ、気付きを与えます。
たとえば、
・最近、確認が増えたのは、○○さんがこれまで以上に慎重に仕事を進めたいと思っているからなのかな?と感じたけど、実際はどう?
・会議で意見を聞かれたときに答えられるのは、常に自分の考えを持っているからこそじゃないか?と感じるけど、実際はどう?
手順③ 「どうなってほしいか」を具体的に伝える
次に必要なのは、期待を曖昧にしないことです。
「主体的に」
「もっと考えて」
こうした言葉は、使う側は便利ですが、
受け取る側にはほとんどヒントになりません。
代わりに、こう伝えます。
・「判断に迷ったとき、まず自分なりの案を一つ持ってきてほしい」
・「会議では、正解かどうかより“自分の考え”を一度出してほしい」
ここで初めて、
相手は「何を変えればいいか」をイメージできます。
手順④ 次にやることを一つだけ決める
最後にやるのは、行動を絞ることです。
あれもこれも伝えると、
結局どれも実行されません。
・次の会議で一回だけやる
・次の案件で一つだけ試す
このくらいで十分です。
「まずはここだけやってみたらどうかな?」
そう言えると、フィードバックは一気に現実味を帯びます。
良かれと思ってやりがちな、フィードバックの落とし穴
ここまで読んで、
「それならできそうだ」と感じたかもしれません。
ただ、現場では次のようなポイントでつまずくことが多いです。
落とし穴① 正論を言えば伝わると思ってしまう
内容が正しくても、
相手の頭が「受け止める状態」になっていなければ意味がありません。
正論を並べた結果、
・相手は黙る
・その場は終わる
・何も変わらない
というケースは少なくありません。
落とし穴② タイミングを気にしない
忙しかった直後、失敗した直後、
感情が揺れているタイミング。
この状態で話すと、
内容以前に「聞く余裕」がありません。
短くてもいいので、
落ち着いた時間を選ぶだけで、受け取り方は大きく変わります。
落とし穴③ 相手の立場を想像せずに話す
伝える側は「助けているつもり」でも、
受け取る側は「責められている」と感じることがあります。
特に、
・経験の浅い人
・自信を失いかけている人
こうした相手には、
最初に「期待している理由」を添えるだけで、印象が変わります。
落とし穴④ 毎回同じ言葉を繰り返す
「主体性」
「当事者意識」
「もっと考えて」
便利な言葉ほど、
回数を重ねると意味がぼやけます。
同じ言葉を使っているのに変わらない場合、
言葉を足すのではなく、具体を増やす必要があります。
覚えておいてほしいこと
フィードバックは、
一度で完璧に伝わるものではありません。
大切なのは、
・話したかどうか
ではなく、
・相手がどんな気付きを得たか
そこに目を向けることです。
まとめ
ここまで読んで、「なるほど」と感じた一方で、
こんな気持ちも残っているかもしれません。
・考え方は分かった
・でも、これを自分一人でやり切れるだろうか
・チーム全体で揃えるとなると、少し難しそうだ
それは自然な感覚です。
フィードバックは、
意味を理解しただけでは、現場に定着しません。
実際の場面で使われ、少しずつ揃っていくことで、
ようやく育成の手応えが出てきます。
「フィードバック 意味」と検索する人の多くは、
評価、育成、1on1、上司と部下の関係に、
どこか引っかかりを感じています。
そして多くの場合、
問題は“個人の伝え方”では終わりません。
・人によって言っていることが違う
・上司ごとに基準がばらつく
・良かれと思った声かけが、逆に動きを止めてしまう
こうした状態が続くと、
フィードバックは次第に形だけのものになっていきます。
だからこそ必要なのは、
「うまく伝えられる人」を増やすことではなく、
フィードバックが自然に回る状態をつくることです。
意味をそろえ、考え方をそろえ、
現場で使える形に落とす。
その延長線上に、育成の変化があります。
もし、
「フィードバックを個人の頑張りに任せるのは、そろそろ限界かもしれない」
と感じているなら、
育成の考え方そのものを整理する選択肢もあります。
フィードバックを
“できる人の技術”ではなく、
“組織として回るやり方”に変えていく。
そうした視点で設計された取り組みが、
ヴォケイション・コンサルティングの
管理者研修です。
いま感じている違和感の正体を、
もう一段整理したいときに、
参考になる考え方がまとまっています。
👉 https://vc-corp.net/develop4
フィードバックの意味が変わると、
育成の会話も、1on1の空気も、少しずつ変わっていきます。
その変化は、ゆっくりですが確かなものです。








