正しいことは、これまで何度も伝えてきたはずです。
それでも行動が変わらないとしたら、足りないのは「理解」ではありません。
この記事では、企業で行動がなかなか変わらない理由と、
人を叱ったり意識を高めたりせずに、
行動が揃い始める考え方を、分かりやすく整理します。
正しいことを言っているはずなのに、何も変わらない
「それは分かっている」
「必要なのは理解している」
そう言われる場面は、決して少なくありません。
行動指針もある。
研修もやっている。
制度だって、最低限は整えてきた。
それでも、現場の景色はほとんど変わらない。
会議の空気も、意思決定の速さも、日々の判断基準も、数年前と大差がない。
このとき、組織の中では静かな諦めが生まれます。
「結局、人は簡単には変わらない」
「意識の差だろう」
「やる人はやるし、やらない人はやらない」
ただ、ここまで来て「行動変容」という言葉を調べている時点で、
あなた自身はすでに気づいているはずです。
問題は別のところにありそう….。
② 結論|行動変容は“納得させること”では起きない
先に答えを言うと、
行動変容とは、考え方を説得することではなく、気づけば行動が変わっている状況をつくることです。
納得しても、人は動きません。
腹落ちしても、忙しさの前では後回しになります。
行動が変わるのは、
「やったほうが楽」「やらないほうが不都合」
そう感じる条件が揃ったときです。
意識は、そのあとについてきます。
人は“正しい行動”より“無難な行動”を選ぶ
行動が変わらない理由を、本人の姿勢に求めるのは簡単です。
ただ、少し引いて現場を見てみると、別の構図が見えてきます。
・新しい行動を取っても評価は変わらない
・失敗したときのリスクだけが増える
・周囲は今まで通りのやり方を続けている
この状況で、行動を変える人は少数派です。
それは意欲が低いからではありません。
組織の中で“浮かない選択”をしているだけです。
人は常に、最も安全そうな行動を取ります。
行動変容が起きない組織では、「変わらないこと」が最も合理的な選択になっています。
行動変容が起きる組織と、起きない組織の分岐点
行動変容が起きるかどうかは、
特別な取り組みをしているかどうかで決まるわけではありません。
もっと手前に、はっきりした分かれ道があります。
それは、「行動が変わらなかったときに、どこを見るか」です。
行動変容が起きにくい組織では、
次のような反応がよく見られます。
・当事者の意識が足りない
・忙しさを理由にしている
・もっと主体性を持ってほしい
視線は、常に“人”に向かいます。
一方で、行動が揃い始める組織では、
同じ状況でも問いが変わります。
・その行動を取ると、何が不利になるのか
・取らなくても、困らない理由は何か
・周囲はどんな行動を「普通」と見なしているか
ここで注目されているのは、個人の資質ではなく、行動の前提条件です。
多くの組織では、
「やるべき行動」と「報われる行動」が一致していません。
口では「挑戦しよう」と言いながら、
評価されるのはミスをしないこと。
「部下と向き合え」と言いながら、
時間配分は成果優先のまま。
このズレが残っている限り、
どれだけ正しいメッセージを出しても、行動は揃いません。
人は、空気を読みます。
評価される方向に、無意識に寄っていきます。
だからこそ、行動変容が起きるかどうかは、
“何を言ったか”ではなく、
“どんな行動が安全か”で決まるのです。
ここまで整理すると、
行動変容は決して難解な話ではないことが見えてきます。
人を変える必要はありません。
意識を入れ替えさせる必要もありません。
必要なのは、
「今の行動を選び続ける理由」を一つずつ外していくことです。
行動を変えるために押さえるべき4つの視点
行動変容というと、
何か特別な施策や、新しい仕組みを導入しなければならないように感じられがちです。
ただ実際には、
「すでにある前提」を一つずつ見直すほうが、よほど効果があります。
ここでは、行動が揃い始める組織が必ず確認している
4つの視点を整理します。
1. 環境|その行動を「やりにくく」しているものは何か
まず見るべきは、個人の意欲ではなく環境です。
たとえば、
・その行動を取るための時間は、最初から確保されているか
・他の業務と優先順位が衝突していないか
・ツールや情報が分散していないか
「やる気があればできる」は、
多くの場合、環境の問題を見落としています。
行動が変わらないときは、
やらない理由が環境側に埋まっていないかを先に疑うべきです。
2. 役割|誰の仕事なのかが、曖昧になっていないか
次に確認すべきは、役割の整理です。
・誰が最初に動くのか
・どこまでやれば役割を果たしたと言えるのか
・途中で止まったとき、誰が拾うのか
このあたりが曖昧なままだと、
行動は「善意」に依存します。
善意は長く続きません。
行動変容が起きる組織では、
「誰かがやるだろう」を残さない設計がされています。
3. 評価|やった行動は、どう扱われているか
行動変容で、最も影響が大きいのが評価です。
・その行動をしてもしなくても、結果は同じではないか
・評価面談で話題に上がるか
・周囲からどんな反応が返ってくるか
表向きのメッセージよりも、
実際に評価されている行動のほうが、組織には強く作用します。
評価と行動がズレている限り、
どれだけ正論を伝えても、行動は揃いません。
4. 継続条件|やめたときに、何が起きるか
最後に見るのは、続けなかった場合の状態です。
・やらなくても特に指摘されない
・周囲もやっていない
・やらないほうが楽
この条件が揃っていると、
行動は必ず元に戻ります。
逆に、行動が定着している組織では、
やらないほうが「気持ち悪い」状態ができています。
これは監視ではありません。
当たり前の基準が変わっているだけです。
注意点・落とし穴|行動変容が止まる瞬間
行動変容の取り組みは、
途中で止まることのほうが多い、というのが実情です。
しかも止まるときは、
「うまくいっていない」と気づかれにくい形で起きます。
たとえば、こんな状態です。
・施策は続いているが、話題に上がらなくなった
・最初に比べて、期待値が下がっている
・やっている人と、そうでない人の差が広がっている
この段階では、
表面的には「やっている」ように見えます。
しかし、行動はすでに元に戻り始めています。
特に多い落とし穴は、次の4つです。
●研修や施策を“きっかけ”のまま放置してしまう
最初の熱量だけで動く設計は、必ず息切れします。
●制度を整えたことで安心してしまう
運用や現場の関わり方が変わらなければ、行動は定着しません。
●短期間で結果を求めすぎる
焦りが生まれると、管理が強まり、反発が起きやすくなります。
●変わらない人を問題視してしまう
個人を責め始めた瞬間、構造を見る視点が失われます。
行動変容が止まるときは、
失敗というより、視点がズレているだけのことがほとんどです。
行動が揃う組織には、理由がある
ここまで見てきた通り、
行動変容は、特別な才能や強い意志があって起きるものではありません。
人は、置かれた前提の中で、
一番無理のない行動を選んでいます。
だからこそ、
・行動が揃わない
・施策が続かない
・空気だけが変わらない
こうした状態は、誰かのせいではありません。
変わらないほうが自然な構造が、そのまま残っているだけです。
行動を変えたいとき、
つい「もっと伝えよう」「意識を高めよう」と考えがちですが、
その前に確認したいことがあります。
・今の評価は、どんな行動を後押ししているか
・忙しさや慣習が、どんな選択を正解にしているか
・何もしなくても困らない理由は何か
これらを一つずつ見直すだけで、
現場の反応は変わり始めます。
もし今、
「何度やっても同じところで止まる」
そんな感覚があるなら、
やり方ではなく、土台を整える段階かもしれません。
行動が変わる組織は、偶然できていません。
必ず、そうなる理由があります。
その理由を、構造として整理したい場合は、
一度立ち止まって考える時間を取ることが、
結果的に一番の近道になることもあります。
もし「やり方」ではなく、
行動が変わらない前提そのものを整理したいと感じたら、
こうした考え方も一つの参考になるかもしれません。










