「若手社員がなかなか育たない」
経営者や管理職の方とお話ししていると、この悩みは本当によく耳にします。
採用にはお金も時間もかかります。ようやく入社したと思ったら数年で辞めてしまう。残ったとしても思うように成長せず、結局ベテラン社員ばかりが忙しくなる。
そんな状況に頭を抱えている企業は少なくありません。
ただ、若手育成について話を聞いていると、ある傾向があります。
それは、若手が育っている会社と育っていない会社では、「若手に対する考え方」よりも「人財育成への向き合い方」が大きく違うということです。
育成を必要な投資と考える企業もあれば、できればコストをかけたくないと考える企業もあります。
もちろん、どちらが正しいという話ではありません。
企業規模や経営状況によって判断は変わります。
しかし、その違いが数年後の組織に少なからず影響を与えているのも事実です。
この記事では、若手社員が育つ会社と育たない会社の違いを、人財育成への投資という視点から考えていきます。
若手社員が育たない原因は本人だけではない
若手の離職や成長停滞を個人の問題にしていないか
若手社員が期待通りに育たないと、
「最近の若手は主体性がない」
「打たれ弱い」
「すぐ辞める」
といった声が出ることがあります。
もちろん、個人差はあります。
ただ、同じ人が別の会社では活躍しているケースも珍しくありません。
実際、中途採用市場では前職で評価されなかった人財が、
転職後に成果を出すことがあります。
そう考えると、若手本人だけに原因を求めるのは少し早いかもしれません。
人が育つかどうかは本人の努力だけで決まるものではなく、周囲の関わり方や職場環境も影響します。
本当の課題は組織側にあることも多い
若手育成の相談を受ける企業を見ていると、
・育成担当によって教える内容が違う
・管理職が忙しすぎて面談できない
・何をもって一人前なのか定義されていない
といった状況が見られることがあります。
一方で、若手本人は真面目に働いているケースも少なくありません。
問題は能力不足ではなく、「育成の前提条件」が整っていないことです。
特に中小企業では、現場が忙しいあまり育成が後回しになることがあります。
すると、教えられないまま仕事を任され、失敗し、本人の自信がなくなる。その結果として離職につながることもあります。
若手が育たない原因を考えるときは、本人だけでなく会社側にも目を向ける必要があります。
人財育成に投資しない会社の特徴
育成をコストとして考えている
人財育成にはお金がかかります。
研修費用だけではありません。
面談時間、教育担当者の工数、評価制度の整備など、さまざまな負担が発生します。
そのため、
「今はそこまで余裕がない」
「まずは売上を伸ばしたい」
と判断する企業もあります。
これは決して間違いではありません。
ただ、その結果として若手が育たず、採用を繰り返す状態になると、長期的にはより大きなコストになる場合があります。
管理職任せになっている
育成方針はあるものの、実際は現場任せになっている企業もあります。
管理職によって育成レベルが大きく異なるため、
ある部署では若手が成長し、別の部署では離職が続く。
そんな状況も起こり得ます。
育成が個人の力量に依存している状態では、組織全体として再現性を持たせることが難しくなります。
売上を優先し続けている
企業経営において売上は重要です。
ただ、人手不足が続く中で目の前の数字ばかりを追い続けると、教育の時間が確保できなくなります。
若手に仕事を教えるより、自分でやった方が早い。
そう感じる場面もあるでしょう。
しかし、その判断を続けると、いつまでも管理職やベテラン社員の負担は減りません。
育成効果が見えないと考えている
広告なら問い合わせ件数が見えます。
営業活動なら受注件数が見えます。
一方で、人財育成は成果が出るまで時間がかかります。
そのため、
「本当に効果があるのか分からない」
と感じる経営者もいます。
だからこそ、育成施策そのものよりも、どのような人財を育てたいのかを明確にすることが重要になります。
離職コストを把握していない
人が辞めると採用費だけではなく、
・求人掲載費
・面接工数
・教育工数
・引き継ぎ負担
などが発生します。
厚生労働省は令和5年の新規学卒就職者の離職状況を公表しており、
早期離職は多くの企業にとって継続的な課題となっています。
人財育成に投資する会社の特徴
育成を将来への投資と考えている
人財育成に積極的な企業は、教育コストを支出ではなく将来への投資として捉えています。
もちろん、すぐに成果が出るとは限りません。
それでも、
「今育てなければ3年後も同じ課題を抱える」
という視点で判断しています。
短期的な利益だけでなく、組織の持続性まで考えている企業に多い傾向です。
管理職育成から着手している
若手育成が上手くいっている企業を見ると、若手本人よりも先に管理職の教育に力を入れていることがあります。
部下育成の方法や面談スキル、フィードバックの仕方などを学ぶことで、若手が成長しやすい環境を整えているのです。
若手育成の課題は、実は管理職育成の課題でもあります。
キャリア支援を行っている
若手社員は給与だけで会社を選んでいるわけではありません。
自分がどう成長できるのか。
将来どんなキャリアを描けるのか。
そうした部分も重視しています。
そのため、定期的な面談やキャリア相談の機会を設けている企業は、若手との認識のズレを減らしやすくなります。
若手との対話を仕組み化している
問題が起きた時だけ話をするのではなく、定期的に対話する機会を設けている企業もあります。
離職する社員の多くは、辞めるかなり前から何らかの不満や悩みを抱えていることがあります。
そのサインに早く気づけるかどうかは、日頃のコミュニケーションに左右されます。
育成を属人化させていない
育成が上手い会社は、特定の上司だけに頼っていません。
誰が教えても一定の品質で育成できるように、
・育成計画
・評価基準
・面談ルール
・研修制度
などを整えています。
結果として、担当者が変わっても育成が止まりにくくなります。
人財育成への投資が企業にもたらすメリット
若手社員の定着率向上
人財育成への投資は、単にスキルを身につけさせるためだけのものではありません。
実際には、「この会社は自分を大切にしてくれている」と社員が感じるきっかけにもなります。
若手社員が退職する理由として、人間関係や待遇だけでなく、「成長できるイメージが持てない」という声も少なくありません。
仕事を任せるだけでなく、成長を支援する姿勢が伝わることで、会社への信頼感は変わります。
もちろん育成施策だけで離職がなくなるわけではありません。しかし、定着率の高い企業ほど、若手との関わりに時間を使っている傾向があります。
管理職の負担軽減
育成への投資は若手だけでなく、管理職にとってもメリットがあります。
現場では、
「結局自分がやった方が早い」
という状況がよく起こります。
その結果、管理職が業務を抱え込み、プレイヤーとしての仕事から抜け出せなくなります。
一方で、部下が育ち仕事を任せられるようになると、管理職は本来担うべきマネジメント業務に時間を使えるようになります。
短期的には教育に時間がかかりますが、長い目で見ると負担軽減につながるケースも多いです。
採用コストの削減
採用難が続く中、採用コストは年々上昇しています。
求人媒体、人財紹介会社、面接工数などを考えると、一人採用するために大きな費用が発生する企業も珍しくありません。
それにもかかわらず、育成が機能せず短期間で離職してしまえば、その投資は十分に回収できません。
採用を増やすことも大切ですが、それ以上に「採用した人が活躍し続けること」の方が経営への影響は大きい場合があります。
組織力の向上
人が育つ会社は、特定の個人に依存しにくくなります。
ベテラン社員が一人抜けただけで業務が回らなくなる。
営業担当が辞めた途端に売上が落ちる。
このような状態は、多くの中小企業が抱える課題です。
育成が進むことで知識や経験が次の世代へ引き継がれ、組織としての安定性が高まります。
経営者にとっても、「自分がいなくても回る会社」に近づくための重要な取り組みといえるでしょう。
育成に投資できない企業が見落としていること
研修費用より離職コストの方が高い
人財育成への投資を検討するとき、多くの企業が最初に見るのは費用です。
研修費はいくらか。
外部支援は高くないか。
その視点は当然です。
ただ、一方で見落とされやすいのが離職による損失です。
採用活動から教育までかけた時間や費用は、退職によってゼロになるわけではありませんが、大きな機会損失になります。
育成費用だけを見るのではなく、「育成しなかった場合に発生するコスト」まで考えることが重要です。
採用より定着の方が重要な時代
人財不足が続く現在、多くの企業が採用強化に力を入れています。
もちろん採用は重要です。
しかし、採用した人財が定着しなければ、同じ課題を繰り返すことになります。
実際に人財採用で悩む企業の話を聞いていると、「採用できない」よりも「採用しても続か
ない」の方が深刻なケースもあります。
採用活動と育成活動は別々ではなく、本来はセットで考えるべきものです。
人財不足時代は育成力が競争力になる
以前は経験者採用によって人財不足を補える場面もありました。
しかし現在は、多くの企業が同じ人財を取り合っています。
そのため、採用市場だけで解決することが難しくなっています。
こうした環境では、「人を育てられる会社」が強くなります。
給与や知名度だけで勝負するのではなく、成長できる環境を提供できることが企業の魅力になるからです。
今後は商品やサービスだけでなく、人財育成の力そのものが企業競争力の一つになっていくかもしれません。
自社の人財育成課題を見直したい企業様へ
人財育成の課題は企業ごとに異なる
ここまで、人財育成に投資する会社としない会社の違いについてお伝えしてきました。
ただし、育成課題の原因は企業ごとに異なります。
管理職の育成が課題なのか。
若手とのコミュニケーション不足なのか。
評価制度に問題があるのか。
会社によって状況はさまざまです。
だからこそ、他社でうまくいった施策をそのまま導入しても、同じ結果になるとは限りません。
育成施策の前に現状把握が重要
人財育成に取り組む際、まず必要なのは現状を整理することです。
若手社員は何に悩んでいるのか。
管理職はどこでつまずいているのか。
経営者はどのような組織を目指しているのか。
これらを明確にすることで、本当に必要な施策が見えてきます。
焦って制度や研修を増やすよりも、まず課題を正しく把握する方が結果的には近道になることもあります。
ヴォケイション・コンサルティングが支援できること
人財育成の課題は、単に研修を実施すれば解決するものではありません。
管理職育成、キャリア支援、対話の機会づくりなど、複数の要素が関係しています。
ヴォケイション・コンサルティングでは、企業ごとの状況に合わせて、人財育成や組織づくりを支援しています。
若手社員が育たない。
管理職の負担が大きい。
離職が続いている。
そうした課題を感じている場合は、一度現状を整理してみることから始めてみてはいかがでしょうか。










