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中小企業のCMOを“育てる組織設計” ― 導入後に成果を出すマネジメントの仕組み

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中小企業のCMOを“育てる組織設計” ― 導入後に成果を出すマネジメントの仕組み

中小企業がCMOを採用しても、「思ったように成果が出ない」「社内に浸透しない」といった課題は少なくありません。

その原因は、スキル不足ではなく – 「活かし方の設計」にあります。CMOは単なるマーケティング責任者ではなく、経営と現場をつなぐ“橋渡し役”。

採用して終わりではなく、どう育て、どう連携し、どう定着させるかが成果を左右します。本記事では、中小企業がCMOを最大限に活かすための「育成・連携・定着」の仕組みを、具体的な組織設計とマネジメントの観点から解説します。

CMOが機能しない3つの典型パターン

中小企業がCMOを採用しても、「期待したほど成果が出ない」「思っていた役割と違う」と感じるケースは少なくありません。

その背景には、個人の能力ではなく“組織設計の欠陥”があります。ここでは、特に起こりやすい3つの典型パターンを紹介します。

① 権限があいまいで、意思決定が遅い

CMOを迎えても、「最終判断はすべて社長」という構造のままでは、スピード感のあるマーケティングは実現できません。社長の承認待ちで企画が止まり、タイミングを逃す。結果、CMOが“提案するだけの人”になってしまうのです。

解決の鍵は、意思決定の範囲を明確化すること。広告施策やクリエイティブ選定など、一定金額以下の決裁をCMOに委譲するだけでも、実行スピードは大きく変わります。

② CEOが任せきれず、現場との板挟みになる

中小企業では、経営者が「マーケティングの細部」まで関与してしまうことがよくあります。結果として、CMOが社長と現場の間で板挟みになり、意思決定が混乱。現場の信頼も得にくくなります。

CEOとCMOの関係は“指示・従属”ではなく“協働”。経営の方向性はCEOが示し、手段と実行はCMOに任せる。その線引きが組織の自立を生みます。

③ 評価制度が整わず、成果が見えない

「とにかく売上を上げてほしい」という曖昧な期待では、CMOの成果を定量的に評価できません。マーケティングの効果は、短期の売上だけでなく“認知・信頼・リード獲得”など中長期で現れます。

KPI設計と評価制度がなければ、モチベーションは維持できません。たとえば、「リード数増加率」「CVR」「顧客単価」など、数値で追える指標を共通言語として設定することで、CMOは成果を可視化でき、社内の理解も深まります。

✔ まとめ
CMOが機能しない原因の多くは、“人の問題”ではなく“構造の問題”です。まずは「権限」「連携」「評価」という3つの設計を見直すことで、CMOの力を最大限に発揮できる土台が整います。

関連記事:
 中小企業でもできる!CMOを迎えて売上を伸ばすマーケティング体制の作り方

CMOを機能させる組織構造の条件

CMOが成果を出せるかどうかは、個人の力量よりも「組織構造の設計」にかかっています。どれほど優秀なCMOでも、権限・報告・連携のラインが曖昧なままでは、意思決定も実行も滞ってしまいます。

ここでは、CMOを“動かせる組織”をつくるための3つの条件を見ていきましょう。

① 経営チームの役割分担を明確にする(CEO/CMO/CFOの境界線)

中小企業では、CEO・CMO・CFOの役割が重なりやすく、意思決定の重複や衝突が起こりがちです。

たとえば、社長(CEO)が売上戦略まで細かく指示し、CFOが広告費を過度に制約すれば、CMOは戦略を描く余地を失います。重要なのは、「誰が戦略を描き、誰が数字を見て、誰が実行を動かすのか」を明文化すること。

経営チームを以下のように整理するだけで、責任の境界線が明確になります。

役割主な責任領域決裁の方向
CEO企業全体の方向性・市場選定戦略の最終承認
CMO顧客戦略・ブランド・集客全般施策とKPI設計
CFO予算配分・ROI管理・投資判断収益性の監督

この3者の「視点のズレ」をなくすことで、CMOは経営の一翼として機能します。

② CMO直轄の執行ラインを整える(事業部・プロジェクト制など)

多くの中小企業では、マーケティング部門が営業や制作チームの“後方支援”に留まっており、意思決定権が持てません。

その状態では、CMOが描いた戦略が現場で再現されず、成果が出にくくなります。

そこで必要なのが、「CMO直轄ラインの再設計」です。たとえば以下のように、プロジェクト型の執行体制を構築します。

経営の最上位にCEO(経営者)がいて、その直下に CFO と CMO が並ぶ形です。
 CFOは「お金の流れ」を、CMOは「顧客の流れ」をそれぞれ統括します。

CEO(最高経営責任者)
企業全体の方向性と最終意思決定を担う。
├─ CFO(最高財務責任者)
 ・予算配分、利益管理、投資判断を担当。
 ・収益性と資金計画をコントロール。

└─ CMO(最高マーケティング責任者)
 ・マーケティング全体の戦略と実行を統括。
  └─ デジタルマーケティング担当:Web広告、SNS、SEOなどオンライン施策を担当。
  └─ ブランド/PR担当:企業イメージ・広報戦略・メディア対応を統括。
  └─ 営業連携プロジェクトチーム:営業部門と協働し、リード獲得から成約までの流れを最適化。

このように、CMOが“意思決定と実行の両輪”を握る体制を整えることで、スピードと整合性が飛躍的に高まります。

③ CEOとの意思決定ルールを定義する(最終承認・報告経路・頻度)

CMOを採用した直後に最も多いトラブルが、「どこまで任せていいのか分からない」というCEO側の迷いです。

その結果、施策ごとに確認や修正が入り、意思決定がストップしてしまいます。これを防ぐには、あらかじめ意思決定のルールを定義すること

たとえば以下のように「承認・報告・共有」のフローを明文化します。

  • 最終承認:戦略や大型投資はCEO、それ以外はCMOに委任
  • 報告経路:重要指標(CVR、CPA、リード数)は毎週共有
  • 意思決定頻度:月1回の経営会議で進捗とROIをレビュー

このようにルールを“仕組み化”することで、CMOが自走しながらもCEOとの連携を保てる状態をつくれます。

✔ まとめ
CMOが力を発揮するのは、明確な役割・執行ライン・意思決定ルールがある組織です。「誰が何を決め、どこまで任せるか」を明文化することで、CMOは単なる“実務責任者”から、経営を動かす戦略パートナーへと進化します。

CMO育成のための3ステップ・マネジメント設計

CMOを採用したあとに成果を出せるかどうかは、「どのように関わるか」で決まります。
 放任すれば孤立し、干渉すれば主体性を失う – このバランスを整えるためには、「任せる → 実行させる → 一緒に振り返る」という3段階のマネジメント設計が効果的です。

ステップ1:CEOが“任せる範囲”を明確化する

育成の第一歩は、「CMOに何を任せるか」を具体化することです。ここでは、業務の丸投げではなく「経営の目的を共有し、手段を委ねる」という姿勢が重要になります。

たとえば、

  • 市場の選定や方向性はCEOが決める
  • 顧客戦略・ブランド構築・KPI設計はCMOが主導する
    という線引きを明確にすることで、CMOが自立して意思決定できる土台が生まれます。

ステップ2:CMOが“実行体制”を整える

次にCMO自身が、組織を動かすための実行ラインを整えます。マーケティング部門が未整備な企業では、既存の営業・制作・管理担当を巻き込んだ「横断チーム」の形成から始めるとよいでしょう。

たとえば、

  • 営業部門:顧客情報や反応データを共有
  • 制作・広報:発信内容やトーンを統一
    管理部門:予算・データ整備を支援

このようにCMOがハブとなって部門をつなげることで、「マーケティング=一部門の活動」ではなく、「会社全体の戦略」として機能し始めます。

ステップ3:経営会議で“共同判断”を習慣化する

最後に、CMOとCEOが定期的に成果を振り返る仕組みを持つこと。マーケティングの成果は短期的に出にくいため、月次や四半期ごとにKPI・ROI・LTVなどの指標を共有し、方向性をすり合わせることが大切です。

この「共同判断の習慣化」により、CMOは“実務責任者”から“経営パートナー”へと成長します。経営チーム全体がマーケティングを共通言語で語れるようになれば、組織は自然と「売上が伸び続ける構造」に進化していきます。

✔ まとめ
CMOを育てるとは、「スキルを磨かせること」ではなく、役割を委ね、実行を支援し、成果を共に見届けること。この3ステップを仕組み化できる企業ほど、マーケティングは強く、経営は安定します。

外部CMOと内部CMOの使い分け方

CMOを採用・育成していく中で、多くの中小企業が直面するのが、「外部のプロを入れるべきか、それとも社内で育てるべきか」という選択です。

どちらにも明確な利点と限界があり、自社の成長ステージに合わせて最適な形を選ぶことが重要です。

① 外部CMO:変革とスピードをもたらす存在

外部CMOは、他社での経験やマーケット知見をもとに、*短期間で組織の方向性を変える“変革型リーダー”として機能します。メリットは、既存文化にとらわれず、課題を客観的に見抜けること。

たとえば、顧客ターゲットの再定義や販売チャネルの見直しなど、 “内部では気づけなかった構造的なボトルネック”を浮き彫りにします。

一方で、社内文化や人間関係への理解が浅いまま進めると、現場との摩擦が起きやすいというリスクもあります。したがって、「変革フェーズ」や「再構築期」には外部CMOが有効です。

② 内部CMO:文化と継続を担う存在

内部からCMOを育成する場合の最大の強みは、企業文化や顧客理解をすでに持っていること。既存メンバーをCMO候補として育てることで、社内の信頼関係を保ちながら長期的なマーケティング体制を築くことができます。

ただし、内部昇格型の課題は「発想の幅が狭くなりやすい」こと。社内常識に縛られ、既存施策の延長にとどまるケースも少なくありません。この場合は、外部アドバイザーや専門家の視点を一部取り入れることで、思考の幅と実行スピードを補うことができます。

③ 契約CMO・アドバイザリー型CMOの活用

最近では、「フルタイム採用」ではなく、週1〜2日関わる契約型・アドバイザリー型CMOという選択肢も増えています。

この形式は、コストを抑えつつ専門性を導入できるため、初期段階の企業やマーケティング未整備の組織に適しています。

メリットは、

  • 実務経験豊富な人財を部分的に活用できる
  • 社内チームの教育・仕組み化まで支援できる
  • 成長フェーズに合わせて関与度を調整できる

という柔軟性にあります。

ただし、常勤ではないため、社内連携の頻度と責任範囲を契約時に明確化しておく必要があります。

④ 混成モデル:外部CMO+内部副CMOで育てる

実際の成功企業では、「外部CMO」と「内部副CMO」を組み合わせるハイブリッド型(混成モデル)が増えています。外部CMOが戦略・設計・仕組み化を担い、内部メンバーがそのもとで実行・学習・改善を繰り返す-

この流れを6〜12ヶ月継続することで、社内にノウハウと判断基準が蓄積されます。
外部が抜けても組織が自走できる状態、つまり「マーケティングが文化として定着した状態」を目指すことが最終ゴールです。

✔ まとめ

  • 外部CMOは「変革のスピード」を、内部CMOは「継続の文化」を担う。
  • 自社の課題が「仕組みづくり」か「運用定着」かで、最適解は変わる。
  • どちらか一方に頼るのではなく、混成モデルで“育てながら変える”が中小企業には最も現実的。

CMOを支える「CEOマネジメント力」

CMOを採用・育成した後に最も重要なのは、CEO自身の関わり方です。どれほど優秀なCMOでも、経営トップが“任せ方”と“支え方”を誤ると、マーケティングは一時的な施策に終わってしまいます。

そのために欠かせないのが、次の3つの視点です。

  • 任せる勇気と、方向性をすり合わせる習慣
  • KPIやROIといった数値での共通認識
  • CMOを孤立させない組織コミュニケーションの設計

これらのポイントは、すでに以下の記事で詳しく解説しています。
 COOを置いたらどう変わるか?成果指標・評価制度を中小企業視点で解説
 中小企業でもできる!CMOを迎えて売上を伸ばすマーケティング体制の作り方

まとめ ― CMOを“組織文化”として定着させる

CMOの存在価値は、「社長の代わりに動く人」ではなく、組織全体を成長させる“推進装置”にあります。つまり、CMOとは個人の肩書ではなく、経営・現場・顧客をつなぐ“仕組み”そのもの。

この仕組みを文化として定着させることで、マーケティングが一部門の活動ではなく、経営の中心機能として機能し始めます。

経営チームとして成熟する3つの条件

  1. 役割の明確化
    CEO・CFO・CMOの責任範囲と判断領域を整理し、衝突を防ぐ。
  2. 共通言語の共有
    売上・ROI・LTVなどの数値を共通KPIとして持ち、感覚ではなくデータで意思決定する。
  3. 対話の継続と信頼の構築
    月次レビューや戦略会議を通じて、経営・マーケティング・現場が同じ方向を向く。

あなたの会社では、「CMOが機能する設計」になっていますか?

採用して終わりではなく、育てて、定着させ、仕組み化する – それが“持続的に売上を生み出す組織”への第一歩です。

■ CMO導入後の組織設計・人財育成支援はこちら
 → https://vc-corp.net/cxo/