中小企業では、COOを採用しても「思ったように機能しない」という課題が少なくありません。その原因は、能力ではなく“活かし方”の設計不足にあります。
COOは経営者の補佐ではなく、経営チームの一員として組織を動かす存在。
採用後にどう任せ、どう育てるか──そこに成功の分かれ道があります。
COOが機能しない3つの典型パターン
COOを採用したにもかかわらず、期待した成果が出ない – その背景には共通する原因があります。ここでは、中小企業で特に起こりやすい3つのパターンを紹介します。
① 権限があいまいで、意思決定が遅い
COOの役割や判断範囲が明確でないと、現場からの報告がすべて社長経由になり、意思決定が滞ります。結果として、スピード感のある経営判断ができなくなります。
② CEOが任せきれず、現場との板挟みになる
社長が細部まで口を出してしまうと、COOは指示待ちになり、現場との信頼関係も崩れます。経営と現場の橋渡し役であるはずのCOOが、かえって孤立してしまうのです。
③ 評価制度が整わず、成果が見えない
COOの成果が「感覚」や「印象」で判断されると、本人のモチベーションが下がりやすくなります。組織運営・生産性・チーム力といった定量評価の仕組みが欠かせません。
COOを機能させるには、採用後の「設計」と「評価」が鍵になります。
詳しくはCOOを置いたらどう変わるか?成果指標・評価制度を中小企業視点で解説をご覧ください。
COOを機能させる組織構造の条件
COOが本来の力を発揮するためには、「個人の能力」よりも、組織の設計そのものが重要です。どれほど優秀なCOOでも、役割や権限が曖昧なままでは機能しません。ここでは、COOを活かすために必要な組織構造の3つの条件を解説します。
1. 経営チームの役割分担(CEO/COO/CFOの境界線)
まず明確にすべきは、経営チーム内での役割の線引きです。
CEOは「方向を決める人」、COOは「動かす人」、CFOは「資金とリスクを管理する人」。この3者の責任領域を整理しておくことで、意思決定の重複や混乱を防げます。
2. COO直轄の執行ライン設計(事業部・プロジェクト制など)
COOが現場を統括できるよう、直轄の執行ラインを持たせることが重要です。営業・開発・管理などの部門を横断して動ける体制にすれば、現場の判断スピードと経営の整合性が保たれます。「社長の伝言係」ではなく、「現場を動かす指揮者」として機能させましょう。
3. CEOとの意思決定ルール(最終承認・報告経路・頻度)
COOに権限を与えても、報告や承認のルールが曖昧だと混乱を招きます。
たとえば、
- 日常業務の判断はCOOが行う
- 経営方針や人事・投資などはCEOが最終承認
- 週1回の定例で意思決定事項を共有
といった具体的なルールを設けることで、スピードと統制の両立が可能になります。
COOを活かす組織とは、「任せられる設計」がある組織です。役割・ライン・ルールの3点を明確にすることで、COOは初めて経営の実行力を担う存在になります。
COO育成のための3ステップ・マネジメント設計
COOを採用しても、放任していては成長せず、細かく管理しすぎても動けなくなります。
大切なのは、段階的に任せながら“経営の実行力”を育てる仕組みを整えることです。ここでは、COOを育てるための3つのステップを紹介します。
ステップ1:CEOが“任せる範囲”を明確化する
まずは、COOにどの領域まで権限を委ねるかを定義します。営業・組織運営・管理業務など、具体的な範囲と判断基準を明示することで、COOは安心して決断できるようになります。「任せる範囲の明確化」が、信頼関係づくりの第一歩です。
ステップ2:COOが“実行体制”を整える
次に、COO自身がチームを動かす仕組みを構築します。部門横断のプロジェクト設計、KPIの設定、会議体の運営など、現場が自走できる体制づくりが重要です。
この段階で、CEOは「助言」ではなく「承認とサポート」に徹することがポイントです。
ステップ3:経営会議を通じて“共同判断”を習慣化する
最後は、CEOとCOOが定期的に経営状況を共有し、共同で意思決定を行う仕組みを定着させます。週次や月次の経営会議で、目標・課題・施策を確認することで、経営チームとしての一体感が生まれます。
この習慣が、COOを「実務担当」から「経営の実行責任者」へと育てる鍵になります。
COOを育てるとは、単に“任せること”ではなく、“任せられる仕組み”を整えることです。3つのステップを意識することで、経営チームとしての機能性が格段に高まります。
外部COOと内部COOの使い分け方
COOと一口にいっても、外部から迎える場合と社内から昇格させる場合では、果たす役割や効果が大きく異なります。自社の成長段階や課題に応じて、どちらを選ぶか、あるいは組み合わせるかを見極めることが重要です。
外部COO=変革とスピード
外部から迎えるCOOは、客観的な視点と豊富な経験をもとに、変革を一気に進める力があります。組織に新しい仕組みを導入したい、停滞した現状を打破したいときに適しています。
ただし、社内文化とのギャップが大きい場合、摩擦が生じやすい点には注意が必要です。
内部COO=文化と継続
一方、社内から育てたCOOは、企業文化を理解しており、チームとの信頼関係が強いことが特徴です。既存の体制を維持しながら、改善を地道に積み上げるフェーズに向いています。
ただし、新しい視点やスピード感を生み出しにくいという課題もあります。
契約COO・アドバイザリー型COOの利点と限界
短期間で課題を整理したい場合や、特定領域(事業再生・組織設計など)を支援してほしい場合には、契約型・アドバイザリー型のCOOも有効です。
一方で、日常的な意思決定やチーム運営には関与しづらく、“組織の血肉化”が難しいという限界もあります。
混成モデル(外部COO+内部副COO)の導入事例
最近では、外部COOが変革をリードし、社内の副COOが文化や運営を支える「混成モデル」も増えています。
たとえば、外部COOが新しいKPI制度を導入し、内部副COOが現場浸透を担うケースです。この形なら、「スピード」と「定着」の両立が可能になり、組織が安定的に進化していきます。
自社のフェーズに合ったCOOのタイプを選び、短期的な変革力と長期的な継続力のバランスをどう取るかが、経営チームづくりの鍵となります。
COOを支える「CEOマネジメント力」
COOを活かせるかどうかは、COO本人の能力よりも、CEOのマネジメント力にかかっています。「任せ方」「関わり方」「信頼の築き方」──この3つを整えることで、COOは経営の中で真の力を発揮します。
任せる勇気とフィードバックの設計
CEOが細部まで関与しすぎると、COOは動けなくなります。まずは“任せる勇気”を持ち、成果ではなくプロセスを見守ることが大切です。
一方で、放任ではなく、週次や月次でフィードバックの仕組みを設けることで、信頼と改善のサイクルが生まれます。
意思決定を共有する「共通言語(KPI・数値)」の持ち方
CEOとCOOが同じ指標で会話できる状態をつくることが重要です。感覚ではなく、KPIや利益率、成長率など数値で判断を共有する“共通言語”を持てば、意見の食い違いが減り、スピーディに意思決定できます。
COOを孤立させないための定例対話と心理的安全性設
COOは経営と現場の間に立つため、孤立しやすい立場にあります。CEOが定例で対話の時間を取り、悩みや課題を安心して共有できる環境を整えることが不可欠です。信頼関係が強固であれば、COOはリスクを恐れず、経営判断を前に進めることができます。
COOを育てる最大のカギは、CEO自身が「任せながら支える力」を磨くことです。それが、経営チームを強くし、組織全体の推進力を高める原動力になります。
まとめ ― COOを“組織文化”として定着させる
COOの存在価値は、「CEOの分身」ではなく「組織を動かす推進装置」にあります。
つまり、社長の代わりに動く人ではなく、組織全体を前進させる仕組みそのものを担う存在です。そのためには、COOを“個人”としてではなく、“文化として根づかせる”ことが重要です。
誰が担当しても同じように機能し、組織が自走できる状態をつくることが理想です。経営チームとして成熟するためには、次の3つの条件が欠かせません。
- 役割の明確化:CEO・COO・CFOそれぞれの責任と決裁範囲を整理する
- 信頼の共有:数値・方針・判断基準を共通言語で持つ
- 対話の継続:定例会議や1on1を通じて経営の一体感を維持する
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