経営の勘に頼る時代は終わりつつあります。
利益は出ているのに現金が残らない、人財採用が場当たり的 – そんな課題の裏には「CFO機能の欠如」があります。本記事では、CFOの本当の役割から中小企業での導入ポイント、社内で実装する方法までを実践的に解説します。
CFOとは何者か?社長の“右腕”ではなく“数字の翻訳者”である
CFO(Chief Financial Officer/最高財務責任者)は、単なる「お金の管理役」ではありません。
多くの中小企業では、CFOを「経理の延長線上にある存在」と誤解しがちですが、CFOの本質的な役割は「数字を経営に翻訳する参謀」です。
たとえば、月次の試算表や会計レポートは“過去”の数字です。一方で、CFOが担うべきは“未来”の数字──つまり、事業計画や資金繰り、利益の構造設計などに数値的な根拠を与え、社長の意思決定を支えることです。
税理士や経理担当者が「処理する人」であるのに対し、CFOは「経営を動かす数字を構造化する人」。CFOは、経営者の勘や経験に頼った判断を、定量的な裏付けによって加速させる存在であり、いわば“経営の翻訳者”です。
「CFO不在」の中小企業で何が起きているのか?
CFO機能が社内に存在しない中小企業では、気づかないうちに経営の“ズレ”が積み重なっていきます。
たとえば、「黒字なのに資金が足りない」という状況は、多くの経営者が経験しているはずです。これは、利益とキャッシュフローの違いを把握する視点(≒財務思考)が組織内に欠けていることに起因します。
また、採用や設備投資といった意思決定に「なぜ今それをやるのか」「どのくらい効果が見込めるのか」といった数値的な裏付けがないまま、感覚的に進めてしまう場面も少なくありません。その結果、経営の判断がブレやすくなり、外部からの信頼性も下がってしまいます。
さらに深刻なのが、社長がすべての数字を一人で抱えてしまう状況です。「数字の見方がわかるのは自分だけ」「銀行や税理士とのやり取りも自分がやるしかない」という状態は、社長の疲弊を招き、会社の成長を止める要因にもなります。
CFOがいない会社では、経営の“未来”を描くための地図(財務戦略)が存在しません。これが、組織の判断軸のズレ・現場との乖離・中長期視点の欠如といった、さまざまな経営課題の根本原因となっているのです。
CFOを導入することで“経営の何がどう変わる”のか?
CFOを導入する最大のメリットは、経営が「感覚」や「過去の延長」ではなく、数値に基づいた“再現可能な判断”に変わることです。これは単に経理がしっかりするという話ではなく、経営の構造そのものが変化することを意味します。
まず、月次や四半期の数字が「見える化」されることで、意思決定のスピードと質が圧倒的に高まります。たとえば、「今期この投資をすべきか」「採用人数をどこまで増やせるか」といった判断を、感覚ではなく、根拠ある財務データから導けるようになります。
次に、採用・広告・新規事業などの意思決定が数値シミュレーション可能なものへと変わります。費用対効果、回収期間、ROIなどを事前に想定しながら、打ち手の優先順位を整理できるため、失敗確率を大きく下げることができます。
さらに、銀行や出資者との対話力も向上します。財務に裏付けられた資料や戦略を提示できることで、信用力が増し、資金調達やリスケ交渉の場面でも優位に立てるようになります。
そして何より、社長の属人的判断に依存する経営から、「組織としての判断基準」による経営へと進化します。これは、組織が大きくなる中で、最も重要な「仕組み化」の第一歩であり、将来的な成長スピードと持続可能性を左右する分岐点でもあります。
中小企業がCFO機能を“社内に実装”する3ステップ
「うちにはCFOを採用する余裕なんてない」と感じる中小企業でも、CFO機能そのものを社内に実装することは十分に可能です。重要なのは、「肩書きのある人を採ること」ではなく、「経営に必要な機能を明確にし、役割を設計すること」です。
第1ステップ
CFO機能として何を必要とするのかを明確にすることです。たとえば、「資金繰りの見通し」「原価設計の再構築」「部門別損益の可視化」「価格戦略の再設計」など、会社によって必要な機能は異なります。すべてを網羅する必要はなく、優先課題に絞って機能を設計することがポイントです。
第2ステップ
その機能を誰が担うかを決めること。ここでは、既存の経理・財務担当や経営企画スタッフ、あるいは社長自身が一部兼任するという方法も有効です。理想は専任CFOですが、現実には“準CFO”や“兼任型CFO”からスタートする企業が多く、むしろその方が社内浸透がスムーズな場合もあります。
第3ステップ
その役割に対して「何を成果とみなすか(KPI)」を明文化し、組織として機能させることです。KPIは「資金繰り改善」「予算管理の実行率」「利益率の改善幅」など、財務指標だけでなく“行動と仕組みの達成度”で設計するのが望ましいでしょう。
この3ステップを踏むことで、たとえCFOという肩書きがなくとも、経営に必要な判断基盤が社内に構築され、持続的な成長を支える体制が整います。
CFO人財を見極めるための“5つの着眼点”
「CFOが必要だ」と思っても、いざ人を選ぶとなると、「誰が適任なのか」「どこまで任せていいのか」と迷う企業は多くあります。
CFO人財を見極めるには、単に「会計に詳しい」「数字に強い」だけでは不十分です。経営の意思決定に関わるポジションだからこそ、以下の5つの視点が非常に重要になります。
①「数値 × 経営視点」があるか(思考)
CFOは、単に数値を読み解くだけではなく、その数字の背景にある経営構造や事業の動きまで踏まえて考えられる思考力が求められます。
「なぜこの利益率なのか」「この事業モデルのどこに限界があるのか」など、数値を通じて経営の本質に迫る力があるかどうかを見極めましょう。
② 会計に強いだけでなく、社長と議論できるか(関係性)
CFOは、社長の「イエスマン」では務まりません。
社長の意思決定に対して、冷静に数字をもとに助言したり、場合によっては経営の方向性に対して建設的な“NO”を伝えられる関係性が築けるかどうかも極めて重要です。
③ 経営にコミットする意志と余力があるか(稼働・姿勢)
「数字は得意だけど、責任は持ちたくない」
「アドバイスはするけど実行はノータッチ」
このようなスタンスではCFOは務まりません。
たとえ兼任や準CFOであっても、経営に本気で向き合う意志と、一定の稼働・思考余力があるかは重要な選定基準です。
④ 現場との翻訳力があるか(ファイナンス言語⇔現場言語)
CFOは社長と経営数値を共有するだけでなく、現場にその数値の意味を伝え、行動につなげる「翻訳者」でもあります。
難しい財務用語や指標を、営業や現場スタッフでも理解できる言葉に落とし込めるかどうかは、実務において大きな差になります。
⑤ 既存人財の中に“育成候補”がいないか?
必ずしも、外部からCFOを採用しなければならないわけではありません。
むしろ、すでに会社をよく理解している経理責任者や企画スタッフが、少しずつCFO機能を担っていくケースは非常に多いです。
「今はCFOではないが、育てられる人財がいるか?」という視点で、社内を見直してみることもおすすめです。
CFOは“いつか置く”ではなく“今から育てる”時代へ
「もっと会社が大きくなってから」
「もう少し余裕ができてから」
そうやってCFOの導入を後回しにしていると、経営の成長スピードと意思決定の限界が先にやってきます。
経営が動くたびに、「数字がついてこない」「判断の根拠が曖昧」という状態が続けば、いずれ組織全体の動きも鈍化し、人財や資金のロスが大きくなる可能性があります。
CFOは“採用する役職”ではなく、“会社に必要な役割”です。
まずはその役割を明確にし、今いる人財に担わせる形からスタートすれば十分です。
いま、社長が「なんとなく」で判断している業務を見直し、「CFO機能」として社内に落とし込むことで、会社の意思決定はもっとラクに、もっと強くなります。
「数字に強い右腕がほしい」
「採用までは踏み切れないが、経営に数値の軸がほしい」
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