近年、企業の競争力を左右する「ブランド価値」の重要性が高まり、「CBO(最高ブランド責任者)」という役職が注目されています。デジタル化やグローバル展開が進む中、企業のブランド戦略を一貫して管理し、経営戦略と結びつけるCxOの必要性が増しています。
従来、ブランド管理はCMO(最高マーケティング責任者)や広報部門が担っていましたが、経営全体に影響を与える要素として、ブランドを統括する専門ポジションが求められるようになりました。
特に、AppleやNikeのようにブランド戦略を強みにする企業では、CBOが企業価値を高める役割を果たします。本記事では、CBOの役割や導入メリット、他のCxOとの違いについて詳しく解説します。
CBOとは?
CBO(最高ブランド責任者)の基本的な定義
CBO(Chief Brand Officer:最高ブランド責任者)は、企業のブランド価値を統括し、経営戦略とブランド戦略を結びつける役職です。単なるマーケティング施策にとどまらず、企業の理念やビジョンを市場に浸透させ、顧客との信頼関係を築くことが主な役割です。
企業のブランドが消費者の購買行動や企業価値に直結する現代では、ブランド戦略を経営レベルで管理する必要があり、その責任を担うのがCBOです。特に、グローバル企業やブランドの競争力が重要な業界で導入が進んでいます。
他のCxO(CMO・CEO・COO・CTO)との違い
CBOは、他のCxOと連携しながら企業全体のブランド価値を統括します。それぞれの役割との違いは以下の通りです。
役職 | 主な役割 |
---|---|
CBO(最高ブランド責任者) | ブランド戦略の統括、企業理念の市場浸透、顧客体験の向上 |
CMO(最高マーケティング責任者) | マーケティング戦略・広告・販促の企画・実行 |
CEO(最高経営責任者) | 企業全体の経営方針と意思決定 |
COO(最高執行責任者) | 事業運営と組織マネジメントの統括 |
CTO(最高技術責任者) | 技術開発・IT戦略の推進 |
CBOは、CMOの上位概念としてブランド価値の長期的な向上を目的とし、企業文化や経営戦略とも密接に関わる点が特徴です。特に、ブランドが企業価値の大きな要素を占める企業では、CMOとCBOを分けて配置し、より専門的なブランド管理を行うケースが増えています。
CBOの役割と大企業における重要性
ブランド価値の統一と経営戦略との一体化
企業が成長し、複数の事業やブランドを展開すると、ブランドメッセージの統一が難しくなります。地域ごとのマーケティング施策や部門ごとのブランド解釈の違いが、一貫性のない顧客体験を生み出し、企業全体のブランド価値を低下させるリスクがあります。
CBOの役割は、ブランド戦略を全社的に統括し、経営戦略と一体化させることです。単なるマーケティング施策としてではなく、企業のビジョンや成長戦略と連携しながら、ブランドの軸をぶらさずに強化することが求められます。
例えば、短期的な売上向上のためにブランドの方向性を変更すると、企業のアイデンティティが失われ、顧客の信頼を損なう可能性があります。CBOは、CEOやCOOと連携し、「ブランド価値を高めることが、企業の成長につながる」環境を整え、長期的な競争力を確立する役割を果たします。
このように、CBOは単にブランドの統一を図るだけでなく、企業の成長戦略とブランド戦略を融合させ、持続的な企業価値の向上を実現する重要なポジションなのです。
企業の信頼性向上と競争力強化
ブランドの一貫性がない企業は、消費者や取引先からの信頼を得にくく、競争力の低下につながります。特に、SNSやレビューサイトが普及した現代では、一つのブランドイメージのブレが企業全体の評判に大きな影響を与えることがあります。
CBOは、顧客との長期的な信頼関係を築き、ブランド価値を持続的に向上させる役割を担います。適切なブランド管理を行うことで、競争力の強化につながり、企業が市場での優位性を確立しやすくなります。
CBOの導入メリット
グローバル展開におけるブランド統制
グローバル市場では、各地域で異なる消費者ニーズや競争環境が存在するため、ブランドメッセージがバラバラになるリスクがあります。CBOを導入することで、世界中の拠点で一貫したブランドイメージを維持し、現地ごとの柔軟な対応と統一感を両立できます。これにより、各国の市場で信頼性の高いブランドとして認識され、競争力が向上します。
社内外のブランドコミュニケーションの最適化
CBOは、社内の従業員と外部の顧客・パートナーに対して、明確で統一されたブランドメッセージを発信する役割も担います。内部ではブランドの理念や戦略を全社員で共有し、外部では一貫したコミュニケーションを展開することで、企業全体のブランド認知度や信頼性が向上します。結果として、顧客ロイヤルティの向上やパートナーシップの強化が期待できます。
組織のブランディング体制の確立
CBOの導入は、ブランド戦略を専門的に扱う体制を社内に築く絶好の機会となります。専任のCBOがいることで、各部門との連携を密にしながら、ブランドに関する方針やプロセスが明確に定められ、組織全体でブランド価値向上に取り組む文化が根付きます。これにより、長期的な企業成長を支える強固なブランディング基盤が確立されます。
CBOを導入する際のポイント
CMOとの連携
CBOとCMOはどちらもブランド戦略に関わりますが、その役割には違いがあります。CMOはマーケティング活動を通じてブランドの市場価値を高めることに重点を置くのに対し、CBOは企業のビジョンや文化を反映しながらブランドの長期的な価値を統括する役割を担います。
そのため、CBOを導入する際には、CMOとの連携を明確にすることが不可欠です。例えば、CMOはマーケティング戦略の実行を主導し、CBOは企業全体のブランド方針を策定することで、両者の強みを活かした協力体制を構築できます。
CBO人材の適性(どんな人が向いているか)
CBOは単なるブランドマネージャーではなく、経営視点を持ち、ブランドを企業の成長戦略に組み込める人材が求められます。以下のような特性を持つ人がCBOに適しています。
✔ 経営視点を持ち、ブランド戦略を事業成長と結びつけられる
✔ マーケティング、デザイン、広報など多領域の知識がある
✔ 社内外のステークホルダーと円滑に調整できるコミュニケーション能力がある
✔ 市場の変化を捉え、ブランド価値を適応させる柔軟な思考を持っている
CBOを採用する際は、ブランド構築の経験だけでなく、企業全体の戦略に関与できるリーダーシップがあるかを重視することが重要です。
【中小企業向け】CBOの代わりに何ができるか?
CBOはブランド戦略を統括する役職ですが、中小企業ではフルタイムでCBOを採用するのが難しい場合もあります。しかし、CBO的な役割を担う仕組みを整えることで、企業のブランド価値を高めることは可能です。ここでは、CBOを設置せずにブランド戦略を強化する3つの方法を紹介します。
CMOやマーケティング責任者がCBO的な役割を担う
中小企業では、CMO(最高マーケティング責任者)やマーケティング部門の責任者がCBO的な役割を兼務することが現実的な選択肢です。
CBOが企業全体のブランド価値を統括するのに対し、CMOは主にマーケティング活動を通じてブランドを強化する役割を担います。そのため、CMOがCBOの視点を持ち、「単なる広告・販促施策」ではなく、ブランドの理念や企業文化に基づいたマーケティング戦略を推進することが重要になります。
対応策
- CMOsがブランド戦略を意識したマーケティング施策を推進する
- CEOと連携し、ブランドのビジョンを全社的に共有する
- デザイン・広報・カスタマーサポートとも協力し、一貫したブランドイメージを構築
外部ブランディングコンサルタントの活用
CBOを置くほどの規模ではないが、ブランド戦略の専門的な知見が必要な場合、外部のブランディングコンサルタントを活用する方法もあります。
外部の専門家を活用することで、社内にはないブランド戦略の視点や、競争市場での差別化戦略を取り入れることが可能になります。また、一時的なプロジェクトとしてコンサルタントを活用すれば、CBOを採用するよりもコストを抑えながら、ブランド戦略を強化することができます。
対応策
- 企業の現状分析を行い、ブランドの課題を明確にする
- ブランドガイドラインやコミュニケーション戦略を外部専門家と共同で策定
- 必要に応じて、定期的に外部アドバイザーとしてコンサルタントを活用
ブランド戦略に強いCxOの採用
中小企業にとって、CBOを単独で採用するのは難しくても、ブランド戦略に強いCxO(CMO・COO・CFOなど)を採用することで、CBO的な機能を果たすことができます。
例えば、CMOがマーケティングだけでなく、ブランド戦略全体の統括も担うようにする、またはCOO(最高執行責任者)がブランド価値を業務プロセスや顧客体験に反映する体制を整えることで、CBOを置かなくてもブランドの一貫性を維持することが可能です。
対応策
- ブランド戦略の視点を持ったCxO人材を採用・育成する
- 採用時に「ブランドマネジメントの経験があるか」を重視する
- CEOがCxOと連携し、ブランド価値を全社で浸透させる
中小企業では、CBOを単独で設置するのが難しくても、CMOがCBO的な役割を担う、外部コンサルタントを活用する、ブランド戦略に強いCxOを採用するなどの方法で、ブランド価値を高めることができます。
ブランド戦略の強化は、企業の成長に直結します。自社に合った方法を選び、「ブランドの統一と成長戦略の一体化」を実現できる体制を構築することが重要です。
まとめ
CBO(最高ブランド責任者)は、企業のブランド価値を統括し、経営戦略と一体化させる重要な役職です。特に、グローバル展開を行う企業やブランド戦略を強化したい企業にとって、CBOの導入は競争力向上の鍵となります。しかし、中小企業ではCBOを専任で採用するのが難しいため、CMOがCBO的な役割を兼務する、外部のブランディングコンサルタントを活用する、ブランド戦略に強いCxOを採用するなどの代替策が有効です。
企業の成長には、適切なCxOの配置が欠かせません。では、CBO以外のCAO・COO・CFOは、それぞれどのような役割を果たし、企業経営にどんな影響を与えるのでしょうか? 詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→CxOとは?企業における役割と導入メリット、成功するCxOの採用ポイント