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CISOが機能しない本当の理由──問題はセキュリティではなかった

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CISOが機能しない本当の理由──問題はセキュリティではなかった

セキュリティの議題が出た途端、
会議の空気が少し重くなる。

そんな経験はないでしょうか。

「それはCISOに確認しましょう」
「一度、持ち帰りで」
「リスクは分かるけど、今すぐ決める話ではないですよね」

誰かが間違ったことを言っているわけではありません。
慎重さとしては、むしろ正しい。
それでも、会議は前に進まない。

結局、その場では結論が出ず、
数日後、別の会議で同じ話が繰り返される。
その間にも、リスクの状況は静かに変わっていきます。

ここで立ち止まって考えてみてください。

  • 本当に足りないのは、セキュリティの知識でしょうか
  • 専門家がいないことが、問題なのでしょうか

多くの場合、答えは違います。

問題は「何を、誰が、どこまで決めるのか」が
最初から決まっていないことです。

CISOという言葉を調べ始めた背景には、
この“決まらなさ”への違和感があるはずです。
セキュリティの問題に見えて、
実は意思決定そのものが詰まり始めている。
それが、CISOという役職に関心が向く本当の理由です。

CISOが機能しない理由は「人選」ではない

CISOが機能しない原因は、
能力の問題でも、人財の希少性でもありません。
多くの企業で壊れているのは、
セキュリティに関する「決め方」です。

CISOという役職は、しばしば
「セキュリティに詳しい人」
「専門的な助言をくれる人」
として期待されます。

しかし、それだけの役割であれば、
組織の中にすでに似た立場の人は存在しているはずです。

それでもCISOを置いたのに状況が変わらない。
むしろ、判断が遅くなったと感じるケースすらあります。

理由は単純です。

CISOが“決断する役”として
設計されていないからです。

  • 情報は集まる
  • リスクも整理される
  • ただし、最後は誰も決めない

この状態では、
どれだけ優秀な人がCISOに就いても、
役職は形骸化していきます。

セキュリティが弱いのではありません。
判断を引き受ける構造が存在しない。
それが、機能不全の正体です。

なぜCISOは、判断できない立場になりやすいのか

セキュリティの話題には、
どうしても不確実性がつきまといます。

どこまで対策すれば十分なのかが分からない。
やりすぎれば、現場の業務が止まる。
何も起きなければ、投資の効果は見えない。

こうした性質から、
セキュリティは次第に
「慎重に扱うべき専門領域」として切り分けられていきます。

その結果、
問題の本質はセキュリティそのものではないのに、
判断だけが後回しにされやすいテーマになります。

肩書きは増えても、意思決定の流れは変わらない

CISOを設置した企業でも、
実際の判断プロセスをたどってみると、
導入前と大きく変わっていないケースは少なくありません。

平常時は、
CISOが状況を整理し、報告を行う。

判断が必要な場面になると、
経営にエスカレーションされる。

有事になれば、
最終的な決断はトップが下す。

この構造では、
CISOは「決断する立場」ではなく、
判断材料を整える役割に留まります。

それ自体が悪いわけではありません。
問題は、
その前提が組織の中で共有されていないことです。

責任と権限が、知らないうちに分かれていく

もう一つ、よく見られるのが
責任と権限のズレです。

影響が大きいから、
CISO単独では決めさせられない。

しかし専門的すぎて、
経営も即断できない。

その結果、

  • 誰もがリスクは理解している
  • しかし、誰も最終的に引き受けない

という状態が生まれます。

これは、
セキュリティ意識が低いから起きるわけではありません。
むしろ逆で、
全員が真面目だからこそ生じる停滞です。

CISOが機能しない背景には、
この「善意による判断の先送り」があります。

ここまで整理すると、
問題が技術や人財の不足ではないことが、
少しずつ見えてくるはずです。

「CISOがいるのに決まらない」現場で起きていること

ここからは、少し具体的な話に入ります。
いずれも実在の企業をモデルにした擬似ケースですが、
多くの企業で似た構図が見られます。

ケース①:CISOが「最後に呼ばれる人」になっている会社

ある企業では、CISOという役職は設置されています。
月次でセキュリティレポートも提出され、
表面的には体制が整っているように見えました。

しかし実態はこうです。

  • 平常時
    CISOは脅威情報や注意点をまとめて報告する
  • トラブルの兆し
    関係部署で様子見が続く
  • 実際に問題が起きる
    経営会議が開かれ、CISOは説明役として呼ばれる

初動対応が遅れ、

被害の拡大を止めきれませんでした。

後から振り返ると、
「CISOは何を決められる立場だったのか」
誰も明確に答えられなかったそうです。

このケースでは、
CISOが“判断する役”ではなく
説明する役に固定されていたことが、
結果的に対応の遅れを招いていました。

ケース②:CISOが「現場から距離を置かれている」会社

別の企業では、
CISO主導で厳格なセキュリティ方針が策定されました。

内容自体は正しく、
リスクも十分に考慮されています。

ただ、現場の反応は芳しくありませんでした。

  • 手続きが増えて業務が回らない
  • なぜそこまで必要なのか分からない
  • 結局、抜け道を探すようになる

結果として、
ルールは存在するものの、
守られない状態が常態化します。

この会社でも、
CISOの能力が低かったわけではありません。

問題は、
判断の背景と責任の所在が共有されていなかったことです。

現場から見れば、
「誰の判断で、どこまで覚悟して決めたのか」が見えない。
そのため、方針が“上から降ってきたもの”に見えてしまいました。

事例から見える共通点

2つのケースに共通しているのは、
セキュリティ対策そのものではありません。

  • 判断の範囲が曖昧
  • 決断の責任が見えない
  • 結果として、誰も引き受けない

CISOが機能しない現場では、
必ずこの構図が現れます。

まず「判断」を整理するところから始める

ここまで読むと、
「では、何から手をつければいいのか」
という疑問が浮かぶと思います。

重要なのは、
いきなり体制や人の話をしないことです。
まずは、判断の整理から始めます。

STEP1:CISOに「任せる判断」を3つまで決める

最初にやるべきことは、
CISOに何でも任せることではありません。

むしろ逆です。

  • 何を決めてよいのか
  • 何は決めなくてよいのか

この線引きを、意図的に行います。

ポイントは、
多くても3つまでに絞ることです。

たとえば、

  • 一定条件下でのシステム遮断判断
  • セキュリティ投資の優先順位決定
  • 有事時の初動対応レベルの判断

ここで重要なのは、
内容の正しさよりも
「ここまではCISOが決める」と言語化されていることです。

STEP2:「決めないこと」も同時に明確にする

次に必要なのが、
CISOが決めない領域をはっきりさせることです。

  • 事業継続そのものの可否
  • 大規模な予算配分
  • 組織全体の人事判断

これらをCISOの判断範囲に含めてしまうと、
必ず意思決定が止まります。

なぜなら、
責任が重すぎるからです。

判断範囲を狭めることは、
権限を弱めることではありません。

むしろ、
実際に決断できる状態をつくるための前提です。

STEP3:CISOを「諮問役」に固定しない

最後に、見落とされがちな点です。

CISOを、
経営会議で意見を述べるだけの
「諮問役」に固定しないこと。

もちろん、
助言や整理は重要な役割です。
しかし、それだけでは、
判断構造は変わりません。

  • どの判断を
  • どのタイミングで
  • 誰に委ねているのか

これが明確になって初めて、
CISOは機能し始めます。

CISOを置いても失敗しやすいパターン

ここまで読むと、
「判断を整理すればCISOは機能する」
という感覚が持てたかもしれません。

ただし、実務では
分かっていてもハマりやすい落とし穴があります。

「万能なCISO」を期待してしまう

最も多いのが、
CISOにすべてを委ねようとするケースです。

  • 技術も分かる
  • 経営の視点もある
  • 現場とも調整できる

理想としては正しいですが、
現実にはかなり無理があります。

期待が過剰になるほど、
判断は重くなり、
結局「決めきれない人」になってしまいます。

CISOは万能な存在ではありません。
あくまで、限定された判断を引き受ける役割です。

役割を決めたつもりで、実際には共有されていない

経営層の中では
「ここまではCISOに任せている」
という認識があっても、
現場や他部門には伝わっていない。

この状態では、

  • 現場は判断を仰がない
  • CISOは後から説明を求められる
  • 責任の所在が曖昧になる

結果として、
判断のスピードも信頼も失われていきます。

役割設計は、
決めること以上に、伝えることが重要です。

小規模な組織ほど「完璧」を目指してしまう

特に中小規模の企業では、
「ちゃんとやらなければ」という意識が強くなりがちです。

その結果、

  • 判断範囲を広くしすぎる
  • ルールを細かく作りすぎる
  • 現場が疲弊する

セキュリティの目的は、
事故をゼロにすることではありません。
事業を止めないことです。

完璧を目指した瞬間に、
判断は重くなり、
CISOは機能しなくなります。

まとめ|CISOは「人」より先に「役割」を決める

ここまでの内容を、
一度シンプルに整理します。

  • CISOが機能しない理由は、
    セキュリティの難しさではない
  • 問題は、
    何を誰が決めるのかが曖昧なこと
  • 人を置く前に、
    判断の範囲と責任を決める必要がある

CISOは肩書きではありません。
組織の中に「判断を引き受ける場所」をつくることです。

もし今、

  • CISOを置くべきか迷っている
  • すでに設置しているが、機能していない
  • 判断が経営に集中しすぎている

こうした状態であれば、
まずは「人選」よりも
役割と判断の整理から始めてみてください。

そのうえで、
「この役割を誰が担うのが現実的か」
と考える段階になったとき、
初めて採用や外部活用の話が意味を持ちます。

もし、
CISOの採用を前提に検討を進めたい場合は、
以下のページをご参照ください。

CISOを採用した場合はコチラ
https://vc-corp.net/cxo/recruitment/

自社にとって、
どこまでをCISOに任せるべきか。
その前提を整理したうえでの相談であれば、
導入はかなり現実的になるはずです。