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CAO(最高管理責任者)は導入すべきか? 中小企業が「置いて失敗する会社」と「機能させられる会社」の決定的な違い

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CAO(最高管理責任者)は導入すべきか? 中小企業が「置いて失敗する会社」と「機能させられる会社」の決定的な違い

「CAO(最高管理責任者)」という肩書きを見かける機会が増えました。
CXOの一種らしい、経営に関わる重要な役割らしい。そこまでは分かる。

ただ、いざ自社に当てはめて考えようとすると、急に曖昧になります。

COOやCFOなら、まだイメージがつく。
現場を回す、数字を見る。役割が比較的はっきりしているからです。

一方でCAOはどうでしょうか。
「全体を見る人」「経営を整理する人」「調整役」──説明を読めば読むほど、曖昧になる。

しかも、実際に導入した企業の話を聞くと、

  • 役職は増えたが、意思決定は速くならなかった
  • 会議が増えただけで、経営者の負担は減らなかった
  • 結局、社長が全部判断している状態は変わらない

そんな声も少なくありません。

だからこそ、検索しているのだと思います。
「CAOは本当に必要なのか」
「うちの会社に置く意味はあるのか」
「失敗するケースは何が原因なのか」

この記事では、CAOの定義や一般的な役割説明はあえて深掘りしません。
それはすでに多くの記事で語られているからです。

ここで扱うのは、もっと現実的な話です。
なぜCAOを置いて失敗する会社があるのか。
どういう状態なら、CAOは機能するのか。

その判断材料を、できるだけ具体的な形で整理していきます。

CAOは「必要かどうか」ではなく「機能する状態か」で決まる

CAOは「必要な会社」かどうかで決めるものではありません。

見るべきなのは、
「その会社が、CAOを機能させられる状態にあるかどうか」です。

CAOを置いたのにうまくいかないケースの多くは、
人財の能力不足が原因ではありません。

権限が曖昧なまま任せている。
経営者が何も手放していない。
判断の整理がされていない。

この状態で誰を連れてきても、結果は同じです。
CAOは動けません。決められません。

そして、いつの間にか「何をしているのか分からない役職」になっていきます。

逆に言えば、
経営側の準備が整っていれば、CAOは強力に機能します。

だから最初に考えるべき問いは、
「CAOを置くべきか?」ではありません。

「この会社は、CAOが仕事をできる状態だろうか?」

この記事では、その問いに答えるための材料を順番に整理していきます。

CAOが機能しない会社に共通する構造

CAOがうまく機能しない会社には、かなりはっきりした共通点があります。
それは「能力の問題」ではありません。
構造の問題です。

多くの経営者は、CAOを迎えるとき、こう考えがちです。

自分の代わりに全体を見てくれる人
面倒な判断を整理してくれる人

気持ちは分かります。
ただ、この期待の置き方そのものが、すでにズレています。

CAOを「調整役」にしてしまう問題

最初に起きやすいのが、CAOが部門間の調整係になるケースです。

営業と開発の板挟み。
現場と管理部門のすり合わせ。
会議に呼ばれ、話を聞き、空気を整える。

一見すると重要な仕事に見えますが、ここにCAOを置くと、
意思決定は一歩も前に進みません。

なぜなら、
調整はしても「決めていない」からです。

本来CAOが担うのは、
誰かの意見をまとめることではなく、
どこで判断を切るかを決めることです。

権限と責任の線が引かれていない

次に多いのが、権限設計の曖昧さです。

  • COOとどこが違うのか
  • CFOと判断がぶつかったとき、どちらが優先されるのか
  • 最終決裁は誰なのか

これを決めないままCAOを置くと、
「全部相談されるが、何も決められない立場」が生まれます。

結果、どうなるか。

CAOは毎日忙しそうにしています。
会議にも出ています。
資料も読んでいます。

それでも経営は軽くならない。
むしろ、判断が遅くなったと感じることすらあります。

経営者が何も手放していない

一番根が深いのは、ここです。

経営者が、
「最終的には自分が決める」
という状態を変えていない。

口では任せると言いながら、
重要な判断はすべて自分で確認する。
違和感があれば、すぐ口を出す。

この状態では、CAOは育ちません。
というより、役割が成立しません。

CAOが機能しない原因は、
「その人が優秀かどうか」ではありません。

経営側が、CAOが動ける前提を作っていない。
それだけです。

うまくいかなかった会社/立て直した会社

ここで、少し具体的な話をします。
実在の企業ではありませんが、実務でよく見るパターンを基にした擬似ケースです。

ケース①:成長中ベンチャーで起きた失敗

社員数は80名ほど。
売上は伸びていましたが、意思決定が追いつかなくなっていました。

そこで経営者は、
「全体を見てくれる人が必要だ」と考え、
外部から経験豊富なCAOを迎えます。

ところが、半年経っても状況は改善しません。

  • 会議は増えた
  • 判断は相変わらず社長待ち
  • CAOは忙しそうだが、何を決めているのか分からない

理由は単純でした。

CAOに渡されたのは、
「いろいろ見てほしい」という曖昧な役割だけ。

決裁権は持たせていない。
経営者も何も手放していない。

結果、CAOは調整役に回り、
現場と経営の間で消耗していきました。

ケース②:途中で立て直した会社

一方、規模も業種も近い別の会社。
こちらも最初は、同じようにCAOが機能していませんでした。

ただ、途中でやり方を変えます。

経営者がやったのは、派手な改革ではありません。

  • CAOが決める判断を3つに限定
  • それ以外には口を出さないと決める
  • 関与しない会議を明確にした

最初は不安もあったそうです。
ただ、その不安を抑えて任せ続けた。

すると、
CAOの判断が会社の中で「前提」になり始めます。

経営者は細かい判断から解放され、
考える時間が明らかに増えたといいます。

この2社の違いは、人財ではありません。
CAOの使い方です。

CAOを検討する前にやるべき5つの整理

CAOを置くかどうかを考える前に、
実はやっておくべきことがあります。

人を探す前です。
採用要件を作る前です。

「今の経営判断が、どんな状態なのか」を整理すること。
これを飛ばすと、ほぼ確実に失敗します。

STEP1:いま行われている経営判断を全部書き出す

まずはシンプルに、
「誰が、何を、どこで決めているのか」を洗い出します。

  • 事業投資
  • 人事の最終判断
  • 優先順位の変更
  • トラブル時の対応判断

頭の中で把握しているつもりでも、
書き出してみると意外と曖昧です。

ここでは良し悪しを判断しません。
事実を並べるだけで十分です。

STEP2:経営者しか決められない判断を分ける

次に、その判断の中から
「自分にしか決められないもの」を抜き出します。

理念に関わること。
会社の方向性を変える判断。
最終的な責任を負う意思決定。

逆に言えば、
それ以外は本来、誰かに委ねられる判断です。

この線引きができていないと、
CAOを置いても何も変わりません。

STEP3:CAOに任せる判断を3〜5個に絞る

ここが重要です。

CAOに任せる判断は、
最初から広げない方がいい。

3つ、多くても5つ。
それ以上になると、役割がぼやけます。

「全部見てほしい」は、一番やってはいけない任せ方です。

STEP4:CAOが関与しない会議を決める

CAOを置くと、会議が増えがちです。
そして、これはかなり危険なサインでもあります。

判断するために会議があるのであって、
会議のために判断があるわけではありません。

  • 出なくていい会議
  • 報告だけで済む会議

これを最初に決めておかないと、
CAOはすぐに「忙しい人」になります。

STEP5:評価をKPIで縛らない

CAOの仕事は、
短期の数字で測れるものではありません。

数字で縛ると、
判断が小さくなります。

結果として、
「無難な意思決定しかしないCAO」が生まれます。

評価するなら、
経営者自身の負担がどう変わったか。

判断スピードがどう変わったか。

その体感の変化を、無視しないことです。

CAO導入でよくある勘違い

ここからは、
実際によくある「ズレた期待」を整理します。

これに当てはまる場合、
CAOを置くタイミングではない可能性が高いです。

「経験豊富な人なら何とかしてくれる」という期待

CAOは魔法使いではありません。

どれだけ経験があっても、
権限がなく、判断が委ねられていなければ動けない。

人を変えれば解決する、という発想は
この役職に関しては特に危険です。

外部人財の方がうまくいくと思い込む

外部CAOが向いているケースもあります。
ただし条件付きです。

  • 経営課題がある程度言語化されている
  • 判断の土台が社内に共有されている

これがない状態で外部を入れると、
CAOは「事情を知らない口うるさい人」になりがちです。

CAOを入れた瞬間に経営が楽になると思っている

これは正直に言います。

最初は、むしろ大変になります。

判断を手放すストレス。
任せた結果に口出ししたくなる衝動。

これを越えられないと、
CAOは育ちません。

そもそもCAOが向いていない会社もある

全ての会社にCAOが必要なわけではありません。

  • まだ事業が一つしかない
  • 意思決定の量が少ない
  • 経営者が楽しんで全部決めたい

この状態なら、
無理にCAOを置く理由はありません。

CAOは、
経営を軽くしたい人のための役職です。

CAOは役職ではなく、経営の負担を減らすための道具

CAOについて考え始めたとき、
多くの経営者は「人を入れるかどうか」に意識が向きます。

けれど、ここまで読んでいただいた通り、
本当に重要なのはそこではありません。

CAOは、肩書きでも、飾りでもありません。
経営の悩みを一気に解決してくれる存在でもない。

経営者の判断負担を減らすための道具です。

道具は、使い方を間違えれば邪魔になります。
逆に、使いどころがはっきりしていれば、これほど助けになるものもありません。

まずやるべきことは、
「CAOを置くべきか」と悩むことではなく、

  • どんな判断に時間を取られているのか
  • 本当は手放したい判断は何なのか
  • それを誰に、どこまで任せられるのか

ここを一度、落ち着いて書き出してみることです。

それだけでも、
CAOが必要なのか、まだ早いのかは、かなり見えてきます。

もし、整理してみて
「これは一人では抱えきれないな」と感じたなら、
そのとき初めて、CAOという選択肢が現実味を帯びてきます。

急ぐ必要はありません。
流行っているから置くものでもない。

自分の経営を、少し軽くするために使えるか。
その視点だけを持って、考えてみてください。

きっと、次に取るべき一手が見えてくるはずです。