CHRO(最高人事責任者)は、今や大企業だけの役職ではありません。採用・定着・育成といった「人の課題」が経営に直結する中、中小企業でも戦略人事の専門家=CHROを求める動きが広がっています。
本記事では、CHROのニーズが高まる背景や適した人財像、報酬相場、導入パターン、採用成功のポイントをわかりやすく解説します。経営と人事の間にある“目に見えない壁”を越えるヒントとして、ぜひご活用ください。
CHRO転職市場が拡大している理由とは?
CHRO(最高人事責任者)という役職は、これまで大手・外資系企業に特有の存在と見なされてきました。しかし現在では、中堅・中小企業においてもCHRO人財のニーズが急拡大しています。
経営者が「人と組織」の課題を直視するようになった今、人事を経営のど真ん中に置く動きが本格化しているのです。
ここでは、中小企業でCHRO需要が高まる理由を3つの観点から解説します。
中小企業でも「人の課題」が経営課題に直結する時代
採用難・離職率の上昇・育成の属人化・管理職の未成熟 -。こうした「人に関する課題」は、もはや現場任せで解決できるレベルを超えています。
これらの問題は経営の根幹に関わるものであり、今や“人財戦略”そのものが、会社の未来を左右するテーマになっています。特に中小企業では、経営者が人事領域を兼務しているケースも多く、戦略的な人事設計まで手が回らない状況が続きがちです。
その結果、「人を活かしきれない」「組織が育たない」といった深刻な課題に直面する企業が増え、専門的な視点を持つCHRO人財の必要性が急速に高まっています。
✔ CHROの具体的な役割やスキルについては、こちらもご覧ください
→CHROとは?役割と求められるスキルセットを解説
「人的資本経営」が中小企業にも求められる時代に
「人的資本経営」や「サステナビリティ経営」は、もはや一部の大企業だけの取り組みではありません。大手企業との取引や、地域金融機関・投資家との関係構築、さらには従業員からの信頼確保のためにも、中小企業が「人への投資」をどう考えているかが問われる時代です。
特に、従業員の成長支援・エンゲージメント向上・ダイバーシティ推進といった“見えない資産”にどう向き合うかは、企業の信頼性や採用力にも直結します。このような経営課題に、人事の視点で構造的にアプローチできるCHROの存在が不可欠になっているのです。
中小企業でも外部CHROの登用が現実的な選択肢に
「うちの規模でCHROなんて…」と思われる方も少なくありませんが、最近ではフルタイム採用に限らず、業務委託・兼務・顧問型でCHRO機能を導入する中小企業が増加しています。
特に以下のようなタイミングでは、社内に知見がないまま判断を誤ると、組織の土台そのものが崩れるリスクすらあります。
- 上場準備や第三者割当増資に伴うガバナンス体制の整備
- 事業承継やM&Aによる組織再編
- 管理職登用・評価制度の刷新
こうした局面では、「経営と組織」をつなぐ専門家=CHROを外部から迎え入れることが、むしろコスト効率の良い経営判断になるケースも多くなっています。
✔ 採用時の見極めポイントはこちらをご参照ください
→CHRO採用で失敗しないために|選び方と見極めポイント
CHRO人財はどんな中小企業で求められているのか?
CHROの導入は、ただ肩書きを置くことではありません。経営課題を人事の力で解決する「仕組みづくり」の担い手として導入されるケースが増えています。
上場準備中の企業や、組織拡大中の中堅成長企業
上場審査や監査対応に求められる「ガバナンス」「内部統制」はもちろん、従業員数の急増に伴って生じる管理職不在・制度未整備・カルチャー混乱などの課題に直面する企業では、CHROが“経営の要”となる局面が多くなっています。
事業承継・第二創業を迎えるオーナー企業
「これまでの経営スタイルでは組織がついてこない」と感じ始めたときが、CHRO導入のタイミングです。次世代経営者へのバトンタッチや、リーダー層の再構築、企業文化の再定義など、“変化を組織に定着させる存在”としてのCHROが求められています。
離職率・採用難が続く労働集約型企業
製造・物流・介護・サービスなど、人手を必要とする業界では、人財定着・現場マネジメント・キャリア設計が経営課題として重くのしかかっています。
現場を理解し、現実的な仕組みとして人事制度を設計・運用できるCHRO人財は、採用広告よりも効果的な“構造改革”につながる存在です。
✔ 実践型のCHRO像を知りたい方はこちらもどうぞ
→成功するCHROが実践する「組織づくり」5つの視点
CHROのキャリアパスはどう築かれるのか?【中小企業で活かせる人財像】
中小企業においてCHROを担う人財は、必ずしも「CHRO経験者」である必要はありません。むしろ、自社のフェーズに合った実務経験や、経営への理解を持つ人財こそがフィットします。
人事責任者から経営直下へステップアップした人財
中小企業のCHROに多いのが、人事マネージャーや部長として制度運用や採用・育成を担ってきた人財が、経営課題にも目を向けながらCHROへ昇格するパターンです。
特に、採用・評価・育成・労務といった幅広い業務を横断的に経験している人財は、“経営の視点”を持って人事を組み立てる力が求められるCHROのポジションと非常に相性が良いと言えます。
HRBP・労務・採用領域に強みを持つスペシャリスト
特定の専門性を強みにしながら、経営層と距離の近いポジションで経験を積んできた人財も、CHROとしての素地を持っています。
例えば「HRBPとして現場支援を担っていた人」「労務責任者として制度設計から運用まで関わっていた人」「採用責任者として採用戦略全体を設計してきた人」などが挙げられます。
これらの人財は、専門性に裏打ちされた施策の実行力と、社内外との調整・巻き込み力を武器に、中小企業における実践的CHROとして活躍できます。
営業や事業開発から「人と組織」に転身した経営感覚人財
近年では、営業や事業部長としてのキャリアを持ちながら、「人と組織の可能性」に惹かれて人事領域に転身した人財が、CHROとして高く評価されるケースも増えています。
こうした人財は、単なる人事制度の運用にとどまらず、「人を活かしてどう業績を上げるか」「組織をどう変革するか」といった、経営感覚と現場視点を融合させた施策設計が得意です。
中小企業では特にこのような“事業理解を持つ人事責任者”が重宝されます。
中小企業が求めるCHROのスキルと資質とは?
大企業のCHROに求められるスキルと、中小企業で成果を出せるCHROのスキルは必ずしも一致しません。中堅・中小企業では、「実行力」や「現場との一体感」「経営との距離感」が何よりも重視されます。
「制度設計」より「仕組みの運用と浸透」に強い
中小企業ではゼロから制度をつくるよりも、「ある制度をどう現場に根づかせるか」が課題になりやすい傾向にあります。
そのため、制度設計の知識以上に、仕組みを現場にフィットさせて機能させる力=“運用力”が問われます。
具体的には、現場ヒアリングをもとに制度を調整したり、評価制度を組織に合わせてカスタマイズするなど、制度を“使える形”にまで落とし込める力がCHROには求められます。
「管理」よりも「変化に伴走できる柔軟性」
急成長・事業転換・承継期など、変化の真っただ中にある中小企業では、過去の成功パターンに固執せず、柔軟に対応できる姿勢が重要です。
「人事制度の安定運用」ではなく、「事業や組織の変化を加速させるための人事」へと発想を転換できるCHROこそが、これからの中小企業に求められる人財像です。
「経営者と同じ目線で語れる対話力」
最終的に、CHROが中小企業で成果を出すために最も重要なのは、「経営者の右腕として機能できるかどうか」です。
経営者が抱える“ぼんやりとした不安”を言語化し、人・組織の観点から解決策を提案できる。そんな対話力・翻訳力を持つ人財こそが、実践的CHROとして重宝されます。
CHRO人財の年収水準と報酬設計【中小企業での相場感】
CHROの報酬設計は、その人財の役割や関わり方によって大きく異なります。中小企業においては、常勤雇用・業務委託・顧問契約など多様な雇用形態が選ばれており、予算やフェーズに応じた柔軟な導入が可能です。
フルタイム採用の場合の年収相場(800〜1200万円)
CHROを常勤社員として採用する場合、年収の目安は800万円〜1200万円程度が一般的です。
これは、経営企画や財務責任者と同等の待遇水準であり、企業にとって「経営を担う人財」として迎える位置づけとなります。企業規模や業種によっては、報酬額に幅が出ることもありますが、重要なのは報酬以上の役割期待と意思決定権を与えること。
報酬水準だけでなく、経営陣との対話の場や裁量権があるかどうかが、優秀なCHRO人財から選ばれる条件になります。
業務委託・顧問型CHROの報酬水準(月額20〜80万円)
近年増えているのが、業務委託や顧問型でCHRO機能を導入するケースです。この場合、週1〜2日の稼働や、プロジェクト単位での関与となることが多く、月額報酬は20万円〜80万円前後が相場です。
「まずは制度整備だけ」「採用戦略だけ」など、テーマを絞った短期的な支援にも対応しやすく、コストを抑えつつ経営クラスの知見を取り入れられる選択肢として注目されています。自社の状況や予算に応じて段階的に関与を拡大していくことも可能です。
成果報酬やストックオプション導入の可能性
事業成長や資金調達などを見越し、成果連動型の報酬設計やストックオプション(SO)を組み合わせる企業も増えています。
特に、上場準備中の企業や、第二創業期を迎えるベンチャー型中小企業では、「経営にコミットしてもらう」ための手段としてSOが有効です。こうした報酬制度を導入することで、CHROを“外部人財”ではなく“経営パートナー”として位置づけることが可能になります。
中小企業がCHRO採用に成功するためのポイント
CHRO採用においては、「どんな人を採るか」以上に、「どんな目的で採るのか」を明確にすることが重要です。
「課題」と「期待値」を言語化する
採用前にまず行うべきは、自社が抱える人と組織の課題を言語化することです。
たとえば…
- 採用がうまくいかない → 原因は戦略設計?ブランディング?運用フロー?
- 離職が止まらない → 評価制度の設計?マネジメントスキル?風土の問題?
こうした課題に対して、CHROに何を期待するのか、どんな成果を目指すのかを明確にしておくことで、ミスマッチを防ぐことができます。
「人事責任者」ではなく「戦略パートナー」として迎える
中小企業では、「人事業務の肩代わり役」としてCHROを求めがちですが、それだけでは経営に資する人財とは巡り会えません。
求めるのは、「経営を人事の力で変えていく」パートナーです。CHROを採用する際には、事業計画・組織ビジョンと連動した“ミッション”を設計し、対等な立場で対話する姿勢が、採用成功の鍵となります。
自社に最適な支援形態(常勤/業務委託)を見極める
すべての企業にフルタイムCHROが必要なわけではありません。 「フェーズに合った支援形態を見極める」ことが、費用対効果を最大化するポイントです。
- 制度構築が急務 → プロジェクト型の業務委託
- 採用戦略の転換期 → 月1顧問契約
- 変革期で本格的に組織を動かす → フルタイム常勤
このように、経営課題の深度と社内リソースに応じて、柔軟にCHRO活用の形を検討することが成功の近道です。
✔ 採用で失敗しないためのチェックポイントはこちら
→CHRO採用で失敗しないために|選び方と見極めポイント
CHRO転職・採用を考える中小企業・候補者の方へ|ヴォケイション・コンサルティング社の支援内容
中小企業がCHROを採用・登用する際、採用ミスマッチや人財母集団形成の難しさを感じるケースが多々あります。
ヴォケイション・コンサルティング社では、中小ベンチャー企業を主軸に、スピード感とマッチング精度を両立したCXO/CHRO人財の採用支援を提供しており、その専門性と信頼性は多くの企業から高く評価されています。
経営課題に応じた人財要件の設計支援
ヴォケイション・コンサルティング社の強みは、まず経営者や事業責任者と密に対話し、経営課題や組織の状態を的確に言語化する点にあります。
これに基づき、期待する役割、スキルセット、組織文化とのフィット感を踏まえた戦略的な人財要件を設計します。
その結果、候補者の本質的な希望や志向を深掘りする職人技のカウンセリングと、企業ビジョンとの高い一致性を確保したマッチングが可能となっています。
“中小企業にフィットする経営視点×人事スキル”人財のご紹介
ヴォケイション・コンサルティング社の紹介候補者は、単なる人事スペックの高い人財ではありません。
- 組織変革の実務経験を持つ
- 中小企業で経営参画しながら成果を出してきた経営感覚型
- 候補者一人ひとりと深く信頼関係を築いた上で紹介できる
といった特徴を持つ人財に厳選されています。
「人の問題が経営のボトルネックになっている」と感じたら、CHROという選択を。
ヴォケイション・コンサルティング社では、中小・ベンチャー企業の経営課題に寄り添いながら、常勤・業務委託を問わず、貴社に最適なCHRO人財をご提案いたします。
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